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感情が思考を作り出す~②他人への期待がもたらすもの~

/ 2024年5月30日
TMK代表取締役 飯田珠紀

前回は価値観と中庸思考のお話をさせていただきました。
今回はその価値観と中庸思考を学んだ私がどのように変化したのか、私自身の経験を紹介しながら、お伝えしていきたいと思います。

まず、皆さんは「他人への期待がもたらすもの」って、どんな物があると思いますか?

女性は家事を担って、家庭を守って当たり前。
男性は働いて稼ぎ、家族を養って当然。

これは「女性は家事を担い、家庭を守るもの」「男性は稼ぎ、家族を養うもの」という世間の期待(常識)が生じさせている状態と言えます。

では、私の他人への期待がどのような状態を生じさせたのか、お話させていただきますね。

Case 1

私は、採用した社員さんに期待を持っていました。
「売上を上げて、昇進して、部下を育ててくれる」そして「部下の見本となり、私の代わりに代弁してくれる」という期待を大いにかけていました。(笑)

そうなれば、当然ながら自分の理想と違ったことが起こります。

これまでの関わり中で「何をやっていたの?」と怒りの感情が湧き、加えて物事が予定通りに行かない事に焦りもでてきました。「この人ではダメだ。能力がない」 と。そして、「なぜ言われたことができないの?」と、自分の不甲斐なさを横に置き他人を責める。

皆、頑張っていないはずはないのですが、私の基準で判断してしまっていたのです。 さらには、これだけ時間とお金をかけて支援してきたのに残念だと…。

私が「この人は頑張ってない」と認知する事で、「この人はやる気がないんだ」と思考してしまうのです。

Case 2

私は娘に期待を持っていました。
ある程度の学力があり、小学校からピアノを弾くことに目覚め、高学年になって狂うようにピアノを弾き出し、中学校ではドラムを嗜み、電子ピアノでボカロを奏で、IT社会が加速する中、オープンスクールにも行き電子系の学校へ進学すると思いきやギリギリになって突然看護科へ。(笑)
これには担任の先生もビックリ! さらに、途中で「看護師になりたくない」と言い出し、大学に編入を検討するも「これ以上勉強したくない」という始末。とほほ・・・ 。

小学校から学習塾に通わせ、私立で5年一貫の学校を選択し、学費もそこそこかかりました。「あと2年で卒業なのに、そう簡単に言わないで」という、怒りもあり、悲しみもあり…感情がぶれまくりました。
そう。
この時私は、私の理想という線路に子供を乗せてしまっていたのです。

Case1は、こうあるべきという期待、 Case2は、こうあって欲しいという期待です。

Case1では、私は人のせいにしているのがわかります。
私自身がどう関われるのか?ではなく、相手に変わって欲しい!というのが顕著に表れていました。自分は自分で自己成長したいと思っていても、実際は、相手を成長させなきゃとか、相手をやる気にさせなきゃとか、自分ではなくて、自分の外側に意識が向いていた(変わらない相手が悪いと思っていた)のです。

Case2に関しては、私の価値観を娘に押し付けていたということです。つまり、娘の選択を「ダメじゃん」とジャッジし、娘が悪いという様に、無意識に娘の行動を批判していたことがわかります。

では、これらのことから期待を捨ててどう変わったのかというと…
Case1では 、教育にはプロセスが重要だと頭では分かっていたのですが、事実、私は結果にフォーカスしていて、さらには短視眼的になっていました。

そして今、目の前で起きている現象は、自分の内面が映し出している現象だということ事に気づきました。 まずは私自身が自分の在り方に意識を向け、自分の改善が必要なんだと。
私の価値観を押し付けるのではなく、相手の強みを引き出すことに注力することで、相手を信頼し、「できる様になるまで伴奏するよ」と言う長期的な目線での思考に変わっていきました。

つまり、自分の期待に沿っていない相手(特性)を、そのまま丸っと受け入れたと言う事になります。

Case2では、娘は何も変わっていませんが、私自身が娘がやれていることに目を向けることができるようになりました。
娘が自分で選んだ学校は、自宅からバスで1時間もかかり、朝は5時起きで6時のバスに乗らないと間に合いません。ほとんど休まず文句一つ言わずに通い続けました。また医療従事者としてホスピス精神を学ぶことで、自分の心と体の意識が高まり、自立心が強く、親に頼らず20歳から生計を立て、今では自分で交渉して仕事も開拓してきます。

娘の価値観を尊重することで、言い争いはなくなり、娘自身が自分で責任をとるため、私が何か口を出すことも無くなりました。 むしろ、自分の好きなことを見出し、楽しんで働いてくれてありがたいなと思っています。

Case1も、2も、こうして相手を受け入れてから、自分の意識が変わったことが大きいのですが、怒りは沸かなくなり、また、イライラはほとんどなくなりました。

私の会社の理念を一言で言うと「働く人の幸せ」なのですが、この目的を見た時に立ち返る様にしているのもありますが、皆、その時々の最善を生きているんだと思うと、相手をコントロールしようとしなくなりました。

ここまで話してきて、皆さんもお気づきだと思うのですが、実は、怒りの発生源は相手ではなく「自分」だったのです。

「こういう期待をあなたにしているんです。」と言う理想を押し付けているからこそ、怒りが生まれているわけなので、それがなくなれば「怒りがなくなる」と言う事になります。 発生源が分かればあとは簡単です。自分の価値観と、相手の価値観は違うんだと言うことを認識することが第一歩なのです。

70億人の人が地球上にいたら、当然70億個の異なる価値観があるので、自分と相手は当然違います。子育てにしても、仕事にしても、それぞれのやり方があります。

自分が自分の価値観を尊重できたら嬉しいように、相手も自分の価値観を受け入れてもらえたら嬉しいし、幸せなのです。

今回は「他人への期待」と言う事についてお伝えしてきました。
他人へ期待を持つということは、「自分へのこうあるべき」という期待となります。

その解決策としては、自分の理想を相手に押し付けるということを手放し、ありのままを受容すること。そうすることで、自分の不安や焦り、不満がなくなり、自分の幸福度も高まっていくのです。

皆さんも一度、自分が誰かにかけている期待が、自分の価値観に基づいた期待になっていないか。を考えていただき、もしそうだったらそれを手放したらどうなるのか、確認してもらえればと思います。